AIの躍進には目を見張るものがある.これは我々をどんな文明社会へと導くのであろうか.これを考究するために,人工知能の歴史を概括し,また未解決の問題を指摘しよう.人類の脳は…
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脳と人工知能-新しい文明と社会を求めて
甘利 俊一 氏(帝京大学先端総合研究機構)
生成型 AIはどこまで進化するのか〜脳研究の観点から
満倉 靖恵 氏(慶應義塾大)
AIによる外観検査自動化の課題
廣瀬 佑介 氏(東芝)
ディープセンシング -画像センシングと処理の同時最適化-
長原 一 氏(大阪大)
非破壊検査・外観検査用画像データセットプロジェクト
浮田 浩行 氏(徳島大)
短時間視聴時代の映像解析技術
~映像自動要約・サムネイル自動抽出~
望月 貴裕 氏(NHK 放送技術研究所)
実走行データの安全性評価のための映像処理技術
伊神 大貴 氏(東京農工大)
講演紹介
特別講演
概要
AIの躍進には目を見張るものがある.これは我々をどんな文明社会へと導くのであろうか.これを考究するために,人工知能の歴史を概括し,また未解決の問題を指摘しよう.人類の脳は進化によって発展した.このため,社会生活を送る上で人類に必要な,心,意識,共感などを備えるに至った.人工知能にその必要はない.しかし,人工知能は言語を操り,絵画や音楽をいともたやすく生成する.人類はこれをどう使いこなしその上でどんな文明を築くのか,これに思いを馳せたい.
略歴
- 1958年 東京大学工学部応用物理学科卒業
- 1963年 同大学院数物系研究科を修了,九州大学工学部助教授,東京大学工学部計数工学科助教授,教授を歴任,同名誉教授
- 1996年より理化学研究所に勤務,脳科学総合研究センター長を経て,現在同栄誉研究員
- 2021年より,帝京大学先端総合研究機構特任教授
- 数理工学を専攻,特に情報幾何学,数理脳科学,人工知能を研究し,文化勲章受章,文化功労者.日本学士院賞,IEEE Piore賞,INNS Gabor賞,C&C賞などを受賞.電子情報通信学会,国際神経回路網学会などの会長を歴任した
オーガナイズドセッション
概要
近年,AIの目覚ましい進歩により,製品の外観検査をAIで構築することも実用的なレベルになりつつあります.しかし,一般的な画像認識のタスクと比較して外観検査には独特の課題があり,AIを適用する際に注意が必要です.最も大きな課題は,欠陥品が良品に比べて少数しか得られないことです.良品の外観が材料や製造装置の経時変化によってばらつくことも課題となります.さらに欠陥の流出が許されない製造現場でどのように運用するか,という点も議論が必要です.本講演ではこれらの課題を整理し,解決するための技術と取組みについてご紹介します.外観検査の自動化にお悩みの方のヒントにして頂ければと思います.
略歴
- 2009年 京都大学大学院情報学研究科卒(修士)
- 2009年 株式会社東芝生産技術センターに入社,現在に至る
- 画像検査関連の研究開発、社内外の工場で現場導入支援に従事
概要
ティープラーニングは画像処理や認識タスクにおける強力なツールとして現在盛んに利用されている.しかしながら,従来のディープラーニングは,画像を撮影しデジタル化した後の,画像特徴抽出や認識モデルなどのデジタル層のモデルの最適化を行なっているのに過ぎない.本研究では,新たな機械学習による画像処理パイプライン全体の最適化フレームワーク“ディープセンシング”を提案する.このフレームワークでは,カメラの光学系やセンサなどの撮像ハードウェアをシミュレーションし,そのハードウェアパラメータや設計を特徴抽出や認識器と共に学習により最適化する.実際に,このフレームワークの実証例として,ライトフィールド圧縮センシング,ビデオ圧縮センシング,アクション認識,プライバシセンシングなどの事例を紹介しその有効性を示す.
略歴
- 2001年 大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程了.同年日本学術振興会研究員として同研究科に所属
- 2003年 大阪大学大学院基礎工学研究科助手
- 2010年 九州大学大学院システム情報科学研究院准教授
- 2005年 フランスピカルディ大学客員助教授
- 2007-08,2016-17年 アメリカコロンビア大学客員研究員
- 2017年 大阪大学データビリティフロンティア機構教授
概要
近年,非破壊検査や外観検査の分野にも機械学習を用いた検査手法の開発が進んでいる.また,機械学習のための様々な対象に関する画像データセットが多くのサイトで公開されている.しかし,非破壊・外観検査においては,不良品の発生頻度が低く,学習に十分な画像データが得られない問題がある.そこで,我々は,非破壊・外観検査を中心に画像データセットを収集・公開するプロジェクトを進めている.ここでは,画像データセットの「詳細情報」も含めて公開することや,検査手法データベースの構築を特徴とする.本講演では,当プロジェクトの進捗状況を報告し,非破壊・外観検査技術の向上に向けて,多くの方と協力できる体制の構築についての展望を示す.
略歴
- 1994年3月 岡山大学大学院工学研究科情報工学専攻修了
- 2003年3月 京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻論文博士
- 1995年10月 徳島大学工学部助手
- 2004年4月 徳島大学工学部講師
- 現在,所属先の名称変更により,徳島大学大学院社会産業理工学研究部講師
概要
ショート動画が好まれる時代となり,放送局においても,放送コンテンツの要約動画をSNSで配信する機運が高まってきた.そこで我々は,番組映像の自動要約技術および自動要約システムを開発した.重要シーンならではの構図やカメラワークの特徴を学習したAIを用いて,実際の番組制作スタッフが編集したものに近い品質の要約映像を自動で生成できる.さらに我々は,番組HPも視聴者の接触率向上につながる重要なコンテンツと考え,サムネイル画像の自動抽出技術および番組HPの作成支援システムを開発した.番組の代表画像としての適性を学習したAIが自動抽出したサムネイル候補画像を利用して,少ない労力で番組HPを作成することができる.これらの技術は,ネット向けコンテンツ制作の迅速化を実現し,放送番組のネット展開を大きく後押しするものである.
略歴
- 1996年 東京工業大学大学院総合理工学研究科物理情報工学専攻修士課程修了
- 同年NHK入局.放送技術局 中継制作部を経て,1998年より, 放送技術研究所にて画像検索や映像自動要約などの画像解析に関する研究開発業務に従事
- 2010年 東京工業大学大学院理工学研究科集積システム専攻博士後期課程修了 博士(工学)
特別企画
概要
近年,ChatGPTやStable Diffusionなどを代表とした「生成AI」の発展が著しい.そうした中,今年6月に行われたAI分野の世界最高峰の学会CVPRではEnd-to-endの自動運転フレームワークであるUniADが数多くの先端AI研究を差し置いてBest Paperを獲得した.生成AIが言語や画像に留まらず,自動運転をはじめとしたAIの身体性にアプローチする段階に入ってきたことが示され,ますます注目を集める技術となっている.本講演ではこの生成AIの動向に着目し,日産自動車総合研究所での取り組みも交え,自動運転への適用可能性や,その技術課題などを紹介する.
略歴
- 2006年 東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了
- 2006年 松下電器産業(現パナソニック)株式会社 本社R&D部門 入社
- 2014年 日産自動車株式会社 総合研究所 モビリティ&AI研究所 入社
- 2004年 PRMU(電子情報通信学会 パターン認識・メディア理解研究会)研究奨励賞 受賞
- 2005年 日本機械学会三浦賞 受賞
- 2015年 Most Influential Paper Over the Decade Award at MVA (Machine Vision and Applications) 受賞
概要
自動運転車の実用と普及には,自動運転車の安全性は非常に重要であり,自動運転システムの安全性評価指標の策定とその妥当性の検証は必須である.現在農工大ではドライブレコーダで収集した多様な走行シナリオでのデータを用いて,映像処理技術により安全性評価の検証を行うことを目指している.本講演では,映像からの自車と他車の軌跡推定を中心に,自動運転の安全性評価に関わる映像処理の手法や実用における問題点を紹介する.
略歴
- 2019年 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程 修了
- 2019年 日本電信電話株式会社 コミュニケーション科学基礎研究所 リサーチアソシエイト
- 2022年 東京農工大学大学院工学府機械システム工学専攻 毛利研究室特任助教