• OS4 画像検査機械発展の道程を見据える
  • OS4-O1

    目視官能検査の自動化技術
    ○布施貴史,高橋文之,長門毅,肥塚哲男(富士通研究所)

    従来検査員が官能検査を行っていたカメラ検査を自動化する技術を開発した.カメラの検査には大別して黒シミ検査とカラー検査があるが,これまでの検査員の作業では,個人差や習熟度,疲労度により検査結果にばらつきが生じる懸念があり自動検査が求められていた.しかしながら,これらの官能検査は汎用性の高い定量的な自動化が困難であり,特に多品種を扱う生産ラインでは実用化に至らなかった.今回,視覚特性に基づいた黒シミ判定アルゴリズムと色差情報を用いたカラー検査技術とを適用することにより,安定した良否判定の自動化を実現できることを明らかにした.

    <キーワード>官能検査,視覚特性,色差情報


    黒シミ検出例 (差分画像)

    OS4-O2

    光沢のある物体の相互反射領域の三次元計測手法
    ○肥後智昭,小林俊広,吉川博志(キヤノン)

    三次元計測における主要課題の一つである,光沢のある対象物の相互反射問題を解決する手法を提案する.本手法はカメラ2台とプロジェクタの構成を用いて,複数の空間符号化法による距離画像を同時に求め,距離画像の有効性を判断する.さらに,距離計測値が有効であると判断された点に対応するプロジェクタ画素を消光しながら繰り返し計測を行うことで,相互反射の影響を低減しながら計測可能な領域を拡大していく.実験によってその有効性を示した.

    <キーワード>三次元形状計測,空間符号化,相互反射


    鏡面性の高い金属部品の山積み三次元計測結果

    白い点が計測された三次元点である.提案手法による結果は,特に赤丸で示した箇所において,
    他の従来手法では三次元計測が不十分な領域の計測ができている.またノイズの量も少ない. 

    OS4-H1(IS2-A1)

    エッジに基づく固有値テンプレート法によるパターンマッチングとその性能検証
    ○矢田晃嗣郎,上瀧剛,内村圭一(熊本大),浅井大介,竹葉誠(ヒカリ)

    外観検査においてパターンマッチングは基本的な画像処理技術である.これまで著者らは主成分分析により画像間の相関値を効率よく求める固有値テンプレート法を提案してきた.本研究では,従来の固有値テンプレート法に比べ,対象物の欠けや複雑な画像に対して頑健な,画像のエッジに基づく固有値テンプレート法を提案する.提案手法について,シミュレーション画像および実画像に対する性能検証を行う.

    <キーワード>パターンマッチング,画像照合,固有値分解




    OS4-H2(IS2-A2)

    鋼片端面のマーキング文字読取装置の開発
    ○浜元和久,川端 恒徳,前田 悟(神戸製鋼)

    製鉄所内において,マーキング文字を用いた生産管理の自動化を目的としたマーキング文字読取システムが求められる.にじみなどの形状歪みや印字位置の変動があるマーキング文字を外乱が多い生産ライン内で自動読取するために,文字抽出技術や,文字形状の選定方法など各種現場適用技術を開発した.装置の文字列あたりの読取率が95.6%であることを確認,文字読取装置は2006年4月より操業現場で実稼働している.

    <キーワード>パターン認識,文字認識,ニューラルネット


    文字読取装置の構成

    OS4-H3(IS2-A3)

    周辺視と固視微動に学ぶ「傷の気付き」アルゴリズム
    〇青木公也,舟橋琢磨,輿水大和(中京大),三和田靖彦(トヨタ自動車)

    画像検査装置において,傷信号が残存するように照明・光学系を工夫し,高精細なカメラを用意することは可能となった.しかし,傷検出処理は未だに一品一様であり,対象毎にノウハウを駆使して設計するのが一般的である.一方我々は,個別事例に通貫した検査原理の機械化には,製造と検査プロセスに通底した熟練検査員の注意・集中意識や視覚生理機構に対する学び・モデル化が必要であると考えている.本研究では,視覚生理機構の一つである周辺視と固視微動に学び,周囲とは僅かに異なる傷・欠陥を発見するアルゴリズムを提案する.実験より,提案手法は様々な目視検査対象における傷発見プロセスとして,汎用的に適用できる可能性があることを確認した.

    <キーワード>外観検査,周辺視,固視微動,人の検査メカニズム


    様々なワークの傷・欠陥の発見が可能
    (金網,鋳造品,布,金属ワークetc.)

    OS4-H4(IS2-A4)

    組合せ照合に基づくリカバリ識別による産業部品検査への応用
    ○磯部純希,金子俊一(北大)

    組合せ照合法とリカバリ識別を用いて,産業部品を対象物とし,これをロバストかつ高精度で欠陥検査が行える手法を提案する.ここで提案するリカバリ識別とは,類似度が小さく信頼性の低い対象物に対して,他の照合事例に助けを求めて再度評価を行うことである.また,組合せ照合法は二つ以上の参照画像を組み合わせて類似度を算出し照合評価する手法である.OCMを利用したこれらの手法を用いて,欠陥検査における有効性を実験によって示す.

    <キーワード>組合せ照合法,リカバリ識別,位置ずらしテンプレート,しきい値


    検査アルゴリズム

    OS4-H5(IS2-A5)

    モアレデフレクトメトリに基づく鏡面形状計測
    ○廣瀬知弘 北山綱次(豊田中研)

    自動車の車体ボデー,機構部品,内外装意匠品の生産現場では,対象の形状を非接触に計測する三次元デジタイザが不可欠である.従来の格子投影法に基づくデジタイザでは,メッキ品などの「鏡面」を有する対象を計測することが難しいとされてきた.本稿では,鏡面用デジタイザの実現を目指した取り組みとして,モアレデフレクトメリに基づく形状計測の研究を報告する.

    <キーワード>三次元デジタイザ,形状計測,モアレ


    計測システムの概念図

    OS4-H6(IS2-A6)

    干渉色画像解析による透明膜の高速膜厚分布測定
    ○北川克一,大槻真左文,坪井辰彦(東レエンジニアリング)

    分光法に代表される従来の光学的膜厚測定法は,基本的に点計測で速度が遅く,水平分解能も制限されている.我々は,3波長ワンショット干渉法のために開発した広域モデル適合アルゴリズムを拡張展開し,新しい原理の膜厚分布測定装置を開発した.3波長照明系とカラーカメラにより得られる薄膜干渉色画像から各画素の膜厚を推定する.高水平分解能・高速・校正不要という特徴がある.

    <キーワード>膜厚分布測定,3波長,モデル適合


    シャボン膜の膜厚分布測定

    OS4-H7(IS2-A7)

    金属平板傷検査のための落射照明光学系の開発
    ○長嶋千恵,塚田敏彦(豊田中研)

    金属平板に発生する傷等の形状欠陥を検出するための検査光学系を開発している.基本的には欠陥による形状変化を落射照明法にて検出する方法であるが,絞り値の調整と組み合わせることで検出感度を制御し,欠陥の傾き(深さ)の違いによる形状特徴を抽出できる.光学系の基本構成と検出画像の光学シミュレーション結果を示し,考案した光学系の有効性について述べる.

    <キーワード>金属光沢面,傷検査,落射照明


    検査光学系の基本構成と撮像シミュレーション結果例

    OS4-H8(IS2-A8)

    鉄鋼材料内に含まれる介在物と亀裂の3次元観察
    ○中村篤人(奈良高専,理研),山下典理男(東大,理研),
    藤崎和弘(弘前大,理研),宇田川毅志(愛知製鋼),横田秀夫(理研)

    鉄鋼材料の3次元内部構造観察システムでは,楕円振動切削による高精度な試料断面創出と光学顕微鏡による断面画像取得を繰り返すことで,試験片全体の3次元内部情報の取得を行う.本研究では同システムに新たに偏斜照明を導入し,従来の落射照明による観察と併用することで,鉄鋼試料中に存在する介在物と空隙,亀裂を判別する手法の確立に取り組んだ.

    <キーワード>3次元内部構造観察,表面欠陥検査,シリアルセクショニング


    落射,偏斜画像を用いたエッジ抽出:
    (a) 落射照明画像,(b) 偏射照明画像,(c) 比較演算画像